夕暮れ空と八月の茶器「萩に雁」

八月の茶器は、紅溜塗(べにためぬり)の「萩に雁」の八角茶器です。

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旧暦八月は、葉月(はづき)萩月(はぎづき)雁来月(かりくるづき)、紅染月(べにぞめづき)とも言われています。
新暦では、ほぼ九月上旬から十月上旬までを指します。

八月の茶器の甲には大きく羽根をひろげた二羽の雁が羽ばたいています。
正面は秋の野の代表的な花である萩が描かれています。
芒(すすき)の穂も朱く染まっています。

八月五日に、紅く染まった夕暮れを見ました。

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紅溜塗の八角茶器に現された紅染月の「萩に雁」が、夕暮れ空と重なって見えました。

猛暑続きだった今年は、池の畔のススキも早くからそよいでいました。

美しい幻想的な夕暮れを観ながら、

「この瞬間を子ども達にも是非見て欲しい。」

と思い、写真に納めました。

四月の棗は卯の花に郭公(ホトトギス)

井伊宗観好みの十二月茶器から四月の棗です。

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卯の花に郭公(ホトギス)の絵で、
潤み塗り、形は面中次です。

潤み塗りは、黒漆に朱、又は紅殻を混入して
栗色の落ち着いた光沢を持つよぅにした技法で、
黒漆の古色にも通じる色とされています。

潤み色の中に、灰褐色の郭公と卯の花が
黒漆で描かれています。

鳥は郭公(ホトトギス)です。
旧暦四月頃に山に来て鳴く声を、
楽しみにしています。

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旧暦四月を卯の花月と云いますが、
初夏を清楚に咲く花には、自然と
「夏は来ぬ」も歌を口ずさみたくなります。

卯の花の匂う垣根に
ホトトギス
早やも来鳴きて
しのび音もらす
夏は来ぬ。

三月の薄茶器

三月の薄茶器は
桜に雉子が描かれた朱塗の棗(なつめ)です。

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棗の形は薬器(やっき)と言って、
薬の容器の形から転用したものです。

花吹雪の中に雉子(きじ)がいます

弥生(いやおい)ー草木がいよいよ生きる三月は
春の野に出て楽しむ歌があります。
百人一首の光孝天皇の歌です。

君がため
春の野に出でて
若菜つむ
わが衣手に
雪は降りつつ

あなたにさしあげようと思って、
春の野に出て若菜を摘んでいる私の袖に
まだ、雪がちらちらと降りかかってまいります。

春の七草。
芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎよう)、蘩蔞(はこべら)、
仏の座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)。

古くから正月に七草を摘んであつものにして、
食べると、邪気を払うとされています。

又、春は苦いものを食べて、
体の中の毒とされるものを出す
時期とも言われています。

日本では古から四季折々に触れ、
理に適った風流な生き方をした人々がいた事に
改めて気づかされます。