桜の開花が聞かれる季節になりました。
百人一首の第9首
花の色は、
移りにけりな
いたづらに
わが身世にふる
ながめせし間に
小野小町の一首です。
春の茶碗も彼女の詩です。
本阿弥光悦の乙御前茶碗です。
本物ではなくて、写しです。
昭和の頃、
京都楽焼き窯元の松楽さんを
知人の案内で訪ねました。
松楽さんの工房と展示場は、
自然の中の静かな佇まいで、
時の草花が自然に優しく活けてあり、
私は一ぺんに魅了されてしまいました。
そこで出遭ったのが、乙御前茶碗でした。
作者の試作品とされ、非売品でした。
乙御前茶碗の裏は、
高台が殆ど低く入り込んでいて、
まるで、おたふくさんのような
ふくよかな所が気に入って、
一度手に取ったら離すことが
できませんでした。
売り物ではありません。
と何度も言われましたが、
何時間も魅せられて離さない私に
呆れてとうとう下さいました。
翌年、御礼を兼ねて伺いました。
松楽さんの温かい人柄が作品から伝わって来る乙御前茶碗。
何時も丁寧に扱い、時おりおりに惜しげ無く活かしています。
松楽さんの心が、皆さんに幸福を与えています。
使う程に景色が変わり、艶が出てきます。
茶碗は生き物。
と思って大切に使っています。
人も物も活かすことが好きな私です。
本阿弥光悦は江戸時代初期の芸術家で、
京都の人です。(1558ー1637)
刀剣の鑑定や書を学び、
寛永、三筆の一人と言われ、
蒔絵等の美術工芸にも、形や構成等に
創意工夫を凝らすことの好きな意匠であったとか。
楽焼にも秀で、茶道を嗜む。
とありました。