夕暮れ空と八月の茶器「萩に雁」

八月の茶器は、紅溜塗(べにためぬり)の「萩に雁」の八角茶器です。

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旧暦八月は、葉月(はづき)萩月(はぎづき)雁来月(かりくるづき)、紅染月(べにぞめづき)とも言われています。
新暦では、ほぼ九月上旬から十月上旬までを指します。

八月の茶器の甲には大きく羽根をひろげた二羽の雁が羽ばたいています。
正面は秋の野の代表的な花である萩が描かれています。
芒(すすき)の穂も朱く染まっています。

八月五日に、紅く染まった夕暮れを見ました。

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紅溜塗の八角茶器に現された紅染月の「萩に雁」が、夕暮れ空と重なって見えました。

猛暑続きだった今年は、池の畔のススキも早くからそよいでいました。

美しい幻想的な夕暮れを観ながら、

「この瞬間を子ども達にも是非見て欲しい。」

と思い、写真に納めました。

卒園生の思いやり

8月最後の日曜日、夏のご褒美が届きました。

卒園生の彼からは、何時も仕事先の名物が送って来ます。
今回は、あか巻とたこめしでした。

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たこめしは、旨みたっぷりの天草産干しだこをたっぷり使った逸品です。

あか巻は、ロールケーキ生地を餅で巻いた天草の「伝統郷土菓子」です。
漁師の体力を補う為の「船上食」として、戦後、牛深で開発されたお菓子です。
熊本県天草市の藍のあまくさ村、手造りの「あか巻」でした。

鹿児島郷土菓子の黒糖「さつまふくれ」は懐かしい味の蒸しパンでした。
熊本県球磨郡山江村産の「がまだすかあちゃん」は生姜と茄子の味噌漬けでした。

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何れも真心の籠もった贈り物でした。
感謝感激致し私の若い頃の保育を思い出しました。

若い頃は、元気いっぱいの男の子が相手でした。
園庭に桐の木を植えて登らせたり、
近くの延命公園にビニール袋を一枚ずつ持たせてごみ拾いに行きました。
公園内では一度通った道は通らないように、なるべく難しい処を歩かせました。
途中、優しい女の子が泣いても私は配慮しながらも無言で歩きました。
自然と心優しい男の子がリーダーになり、クラスを纏めて皆んなが仲良しでした。

私が疲れたと言って教室にうつ伏せになると、
だんだんと静かになって肩を揉んだり触ったりして静かにしてくれました。
活動的で思いやりのあるリーダーが一人いて、
その子が先生役をして皆んなの信頼を得てクラスが纏まっていました。
その当時の卒園生です 。

約半世紀、先代を支えながら、二代目を努め、
児童中心の現場主義を取ってきましたので、
今も多くの方々とのご縁を戴き支えられ、
それが私の元氣の源となっています。

ありがとう。

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京人形師の片岡光春氏を偲ぶ

先週末は雷雨でした。
猛暑も一段落して、日中の蝉の声にも夏の終わりを感じるようになりました。
日没後は心地よい鈴虫の音が聞こえてくるようになりました。

そろそろ重陽の節句です。
文化の秋も近づいてきました。

猛暑の続く中、先週は京都の片岡行雄氏から残暑見舞いが届きました。
片岡氏とは先代の京人形師、片岡光春氏の頃からのお付き合いです。
先代に作って戴いた武者人形の写真を、このブログでご覧になったとの事でした。

前にもご紹介した京都から九州下りした我が家の武者人形です。

京人形師「片岡光春」作の武者人形

京人形師「片岡光春」作の武者人形

片岡光春氏に一年掛けて作って頂いた武者人形です。
名工の魂が入った作品は観る人の心を揺さぶります。

その当時ですら材料の一つ一つを造る名工者の数が減り、作品が出来にくい時代であったと聞き及んでいましたから、大変貴重な武者人形です。

日本の伝統文化に触れる機会を幼少期に与えたいと思い、光春人形師による「武者人形」を、現役時代は毎年五月の節句の時期に保育園の子供達に観賞させていました。

今はブログで武者人形の写真を、このような形でご紹介しています。

片岡氏からのお手紙には、今年の5月にご自宅で催された「片岡光春偲ぶ展」のお写真と資料が添えられていました。 30年前に75才で亡くなった父親の京人形師・光春さんを偲ぶ展覧会の写真と資料です。

「現代の名工」に選ばれた光春氏の「早春」など、十数点を展示された時の写真です。

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片岡氏行雄氏は、只今も京都工芸研究会員の一員としてご活躍の第一人者です。
京都上京区の京都府立鴨沂(おうき)高校出身です。
同校は百四十余年の歴史をもつ名門校で、これまでに多くの優れた日本画、伝統工芸、文系理系等著名な芸術、学問、芸能人、研究分野でも多くの逸材を輩出しています。

夏休みのお客様

猛暑続きのお盆過ぎに、嬉しい来客がありました。
小学生三人のお子さんとお母さんです。

早速、子供達に冷たい地下水で手を洗ってもらいました。
それから直ぐに、お座敷でお茶ごっこをしました。

朝の内に、お盆点ての仕度をしておきました。
山道盆に朝顔の絵が描かれた中次の棗には、抹茶をたっぷり入れておきました。
四人のお客様だったので、
お茶碗は一楽、二萩、三唐津、と八月の平茶碗「松風」です。

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鉄瓶に湯を掛けて、三人のお子さんに手解きしながら、
お茶を点ててもらいました。

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お菓子は和三盆の磯遊びと金平糖です。
金平糖は、ガラスの器に好きなように子どもさんに入れてもらいました。

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お菓子は、お取り廻しで頂いてもらいました。

素直な三人の子どもさんは興味津津。
茶筅の振り方も柔らかく、上手に出来て細い泡の薄茶が出来上がりました。

先ず、お母さんへお茶をお運びしてもらいました。
それから、交代でお抹茶を点ててもらって、運んでもらいました。
無理無く、言葉少なく、短時間で、お茶ごっこが済みました。

それから、手作りの簡単な昼食にしました。
最初に、南瓜、人参、馬鈴薯、牛乳をつかった冷たいポタージュを出しました。
次に出した鶏の手羽元の蒸し焼きが人気でした。
下拵えして玉葱をたっぷり入れて、ジュツクリ蒸し焼きにしておきました。
素麺には、いろいろな生野菜と鶏肉のトッピングをしておきました。

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お寿司ご飯をついであげようとしたら、「お腹一杯。」の声。

食後のフルーツの梨を食べた後、庭へ出た子供たちは、
とかげや蛙やかまきりに興味津津でした。

外で遊ん後も、お茶ごっこをしたがった子供達。
今度は、二服づつ自分で点ててもらいました。
御自服して、満足したようでした。

「一期一会」

三人の子どもさんと愉しく遊んだ夏の一日でした。

お盆に想う

庭の手入れを無事に済ませて、お盆を迎えました。
十三日は亡き夫の月命日で、お寺様がお参りに見えました。
お盆なので、白玉団子と季節の梨で一服指し上げました。

お盆には「切籠灯籠(きりことうろう)」を出して、故人を偲びます。

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この時期は、不思議と虫が近くに飛んできます。
今年は、光を求めて網戸にカブト虫が飛んできました。
一晩我が家にカブト虫君を泊めて、エサをあげてから放ちました。

土手には百合の花がお盆に相応しく清楚に咲いていました。

お盆にはユックリと戴き物の「叶匠壽庵」製の「あも」と、八月の平茶碗「松風」で一服いたしました。

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あもは、棹物の主菓子です。
中に求肥が入り小豆の旨みと調和しています。

昔、宮仕えの上級女官を女房と言って、彼女達の女らしさを現した言葉を女房言葉と言いました。

例えば、寿司は、おすもじ。
香の物は、おくうのもの。
豆腐は、おかべ。
饅頭は、おまん。
そして、
餅は、あも。

そこには、厳しい生活を優しく、柔らかく、美しく感じとろうとした女官達の、願いと知恵が伺われます。

と有りました。

故人の方々や支えて下さった方へも感謝致しました。

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