ご近所の藪椿

子供の頃に疎開していた
母方の祖母の里は三池の高泉にありました。

南側は三池山からの綺麗な水が
せせらぎとなって流れていました。

藪椿が沢山咲いていたので、
子ども心にも綺麗な記憶が残っています。

春になると、
母方の祖母と一緒に伝田屋敷に
花てぼを持って出かけて行きました。

私の好きなきんかんをちぎってはテボに入れたり、
祖母の前掛で拭いてから皮ごと食べて、
香りをたのしみながら喜んで食べていました。

花の輪郭のくっきりとした美しさが好きで、
藪椿は茶花にもよく使います。

ヤブツバキは大牟田市の花です。
伝田屋敷を思い出す懐かしい花です。

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春雨の木曜日

今日は卯月十一日。

どんよりとした空、大気汚染の酷い日です。
鶯や鳥達も啼かず、異様に静まり返っています。

朝の内、不断草を届けて下さった親友のルミ子さんが、

「今年は今の時期に居る虫達もいません。」

と教えてくれました。

我が家の庭にはモグラが地下で動き回った後が有りました。

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「もぐらもくもく、トンネル工事。」

子ども達へ平仮名文字の指導をしていた頃に、
言葉遊びをしながら筆ペンを持って、一緒に書いて遊びました。

今日は午後から、黄色い雨が降りました。
その後、楠木が洗われて、いくらか若葉が綺麗に見えました。

楠の若葉がキラキラと輝く美しい季節です。
古い葉が譲り葉として、庭にパラパラと落ちてきます。
落ち葉掃きも楽しみの一仕事です。

皆様も、どうぞお健やかに。

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四月の棗は卯の花に郭公(ホトトギス)

井伊宗観好みの十二月茶器から四月の棗です。

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卯の花に郭公(ホトギス)の絵で、
潤み塗り、形は面中次です。

潤み塗りは、黒漆に朱、又は紅殻を混入して
栗色の落ち着いた光沢を持つよぅにした技法で、
黒漆の古色にも通じる色とされています。

潤み色の中に、灰褐色の郭公と卯の花が
黒漆で描かれています。

鳥は郭公(ホトトギス)です。
旧暦四月頃に山に来て鳴く声を、
楽しみにしています。

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旧暦四月を卯の花月と云いますが、
初夏を清楚に咲く花には、自然と
「夏は来ぬ」も歌を口ずさみたくなります。

卯の花の匂う垣根に
ホトトギス
早やも来鳴きて
しのび音もらす
夏は来ぬ。

能楽十二曲の卯月は熊野

四月のお茶碗は熊野です。
「熊野」という能仕舞をテーマにした茶椀です。

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立ち出て
峰の雲、
花やあらぬ
初桜の
祇園林、
下河原の絵

平宗盛に因んだ物語に歌が添えてありました。

いかにせん
都の春も
惜しけれど
馴れし東の
花や散るらん

美しい花の都を舞台に
老母の身を気遣いながら舞う
麗人の姿を憶び美しい桜咲く
東山の連峰が描かれています。

四月にはこの茶碗で一服差し上げます。

お菓子は頂き物で、
京都南禅寺、菓匠、清閑院の作。
銘は「雅車」です。

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ここにも日本の歴史と優雅な文化を見ることができます。

 

卯月の玄関床

四月の設え、玄関床のお軸と色紙。

京都、黄檗宗(萬福寺)菅長、岡田恒令老師の書です。

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詠花吟月

大意

花を見たり、中天の月を眺めて
詩歌を口ずさみ、無心に楽しむ。
一点の計らいもなく自然と交わる境地は美しい。

色紙の「美」は、
四十五、六年前に私の子供が幼児の頃、
親子で書道の稽古に行っていた頃に、
書道家の史山先生に頂いた物です。

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子どもに遊び心で興味を持つ骸骨などを書いては
心に残る言葉を中に入れて、
印象づけて下さっていました。

寡黙な怖い印象の先生でしたが、
威厳のある大家でした。