四月の棗は卯の花に郭公(ホトトギス)

井伊宗観好みの十二月茶器から四月の棗です。

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卯の花に郭公(ホトギス)の絵で、
潤み塗り、形は面中次です。

潤み塗りは、黒漆に朱、又は紅殻を混入して
栗色の落ち着いた光沢を持つよぅにした技法で、
黒漆の古色にも通じる色とされています。

潤み色の中に、灰褐色の郭公と卯の花が
黒漆で描かれています。

鳥は郭公(ホトトギス)です。
旧暦四月頃に山に来て鳴く声を、
楽しみにしています。

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旧暦四月を卯の花月と云いますが、
初夏を清楚に咲く花には、自然と
「夏は来ぬ」も歌を口ずさみたくなります。

卯の花の匂う垣根に
ホトトギス
早やも来鳴きて
しのび音もらす
夏は来ぬ。

三月の薄茶器

三月の薄茶器は
桜に雉子が描かれた朱塗の棗(なつめ)です。

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棗の形は薬器(やっき)と言って、
薬の容器の形から転用したものです。

花吹雪の中に雉子(きじ)がいます

弥生(いやおい)ー草木がいよいよ生きる三月は
春の野に出て楽しむ歌があります。
百人一首の光孝天皇の歌です。

君がため
春の野に出でて
若菜つむ
わが衣手に
雪は降りつつ

あなたにさしあげようと思って、
春の野に出て若菜を摘んでいる私の袖に
まだ、雪がちらちらと降りかかってまいります。

春の七草。
芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎよう)、蘩蔞(はこべら)、
仏の座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)。

古くから正月に七草を摘んであつものにして、
食べると、邪気を払うとされています。

又、春は苦いものを食べて、
体の中の毒とされるものを出す
時期とも言われています。

日本では古から四季折々に触れ、
理に適った風流な生き方をした人々がいた事に
改めて気づかされます。

二月の薄茶器

如月(きさらぎ)の語源は木草発月。
木や草の芽の張る月だから。

菫(すみれ)に雲雀(ひばり)の
溜塗(ためぬり)の中棗(ちゅうなつめ)です。

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春の野原や山路に、
うつむき加減に咲いている可憐な菫の花。
天から降り立った雲雀が餌をついばんでいます。

「気更に来る(陽気が更に来る)。」とも言われるように、
温かくなりゆく春の野を表しています。

清少納言の枕草子には、

春は曙、やうやう白くなり行く、山ぎは少しあかりて、
紫だちたる、雲の細くたなびきたる。

志貴の皇子の句には、

石ばしる、
垂水の上の早蕨(さわらび)の
萌え出づる春に、なりにけるかも。

大伴家持の句、

うらうらに
照れる春日に
雲雀あがり、
こころ悲しも
独りしおもへば。

古代から、日本には、
自然の中で、四季おりおりのものと
調和して生活していた豊かな文化があったことを
この年になって気づかされています。