能楽十二曲より十月は木賊(とくさ)の茶碗

新古今集の坂上是則の歌に、

園原や
伏屋に生ふる
箒木の
ありとは見えて
逢はぬ君かな

とあるのに想を得て、
世阿弥元清が作ったという能楽「木賊(とくさ)」。

ある都の僧が、父と生き別れになった少年を連れて、
その父に逢わせようと、少年の故郷である
信濃国の園原に下ります。

木賊を刈る老人に逢ったので、
箒木(ほうきぎ)の事を尋ねると、
老人はそれに答えた後で、
僧達を我が家に伴い帰ります。

たった一人の子が行方不明になったので、
その行方を聞くこともあるのではないかと、
この往来に居所を立て、人々を泊めている。

と語り、酒を勧めて、酔狂の態で、
子供が好んだ小歌や曲舞を真似つつ泣くので、
やがて、僧が、

これがあなたの子です。

と云うと、夢ではないかと喜こんで、
その居所を寺として仏果を結ぶ 、と云う物語です。

これは、その中のうたです。

木賊刈る
山の名までも
園原や
伏屋の里も
秋ぞ来る

能仕舞を趣味とする友人の役に立てばと思い、
ブログに載せました。

20121023-204506.jpg