乙御前(おとごぜ)茶碗の写しに魅せられて。

本阿弥光悦の乙御前茶碗です。

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本物ではなくて、写しです。

昭和の頃、
京都楽焼き窯元の松楽さんを
知人の案内で訪ねました。

松楽さんの工房と展示場は、
自然の中の静かな佇まいで、
時の草花が自然に優しく活けてあり、
私は一ぺんに魅了されてしまいました。

そこで出遭ったのが、乙御前茶碗でした。
作者の試作品とされ、非売品でした。

乙御前茶碗の裏は、
高台が殆ど低く入り込んでいて、
まるで、おたふくさんのような
ふくよかな所が気に入って、
一度手に取ったら離すことが
できませんでした。

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売り物ではありません。

と何度も言われましたが、
何時間も魅せられて離さない私に
呆れてとうとう下さいました。

翌年、御礼を兼ねて伺いました。

松楽さんの温かい人柄が作品から伝わって来る乙御前茶碗。
何時も丁寧に扱い、時おりおりに惜しげ無く活かしています。
松楽さんの心が、皆さんに幸福を与えています。

使う程に景色が変わり、艶が出てきます。

茶碗は生き物。

と思って大切に使っています。

人も物も活かすことが好きな私です。

本阿弥光悦は江戸時代初期の芸術家で、
京都の人です。(1558ー1637)

刀剣の鑑定や書を学び、
寛永、三筆の一人と言われ、
蒔絵等の美術工芸にも、形や構成等に
創意工夫を凝らすことの好きな意匠であったとか。

楽焼にも秀で、茶道を嗜む。

とありました。