奥の細道「矢立の句」

松尾芭蕉の俳句集「奥の細道」より、旅程と俳句

深川ーー行く春や、鳥啼き魚の、目は涙。

日光ーーあら尊、青葉若葉の、日の光。

白河ーー卯の花を、かざしに関の、晴着かな。

松島ーー松島や、鶴に身をかれ、ほととぎ。

中尊寺ーー夏草や、兵ーつわものーどもが、夢の跡。

立石寺ーりゅうしゃくじー閑かさや、岩にしみ入る、蝉の声。

最上川ーー五月雨を、集めて早し、最上川ーもがみがわー。

越後路ーー荒海や、佐渡に横たう、天の川。

金沢ーーあかあかと、日はつれなくも、秋の風。

大垣ーー蛤ーはまぐりーの、ふたみに別れ、行く秋ぞ。

矢立とは、墨壺に筆を入れる筒の付いたものです。
主に江戸時代に帯に差し込みなどして携帯し、使われてました。
最近リバイバルして、お使いになる人もあるようです。

奥の細道には、

是を矢立の始として、行く道なほすすまず。
懐中より出して、一墨、筆取り出して、便りをする。

とあります。

いかにも風流な夫の遺した矢立を見ながら、
奥の細道の句を詠んでいます。

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九月の設え、薩摩焼、秋草模様

爽やかな涼風とつくつく法師の音を聞きながら、
部屋の設えを楽しんでいます。

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写真の薩摩焼、秋草模様の大花瓶は、
今は亡き、祖母の親友の親子の方々が祖母の長寿を祝い、
昭和五十六年に下さったお品です。

文禄の役で、島津義弘氏が日本ヘ連れ帰った、
朝鮮の陶工によって創始されたと言う、薩摩焼。

記念にいただいた秋草模様の大花瓶には、
歴史の重みと人の心が込められていて、
何時見ても魅了されます。

香合は茶道の故園田りゅう先生と、
一緒に飛騨高山へ旅をした時に求めた、
一位一刀彫りのもみじ香合です。

古帛紗は息子一家が鹿児島ヘ旅した時に、
嫁の智佳子さんからお土産にもらったものです。

鹿児島の尚古集成館のコレクションで、
「桜立涌紋(さくらたてわきもん)」です。

島津家に伝わる犬追物(いぬおうもの)で、
装束の犬射籠手(いぬいこて)に使用されている文様です。

その装束は二十九代島津忠義が、
明治天皇の御前で犬追う物を行った時に着用したと
いわれるものです。

いずれも日本の歴史と優雅な文化を感じるお品ばかりです。

「墨場必携」閑適類十二字より

昭和四十年に、
書家の村上史山先生が書いて下さった色紙の額です。

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情を宇宙の外に放(欲しいまま)にし、
足を懐抱の中に息わん。

この世の外に情を欲しいままにするから、
俗事に拘泥せぬ。

名利の場に足をふみ入れることは要しない。

心の中で休ませる。

明治生まれの人達の学問の深さが偲ばれます。

親子で先生宅に伺って、書道の手ほどきを受けていた頃を
懐かしく思う夕方です。